DENNIS COOPER :

フランク・ザッパやパティ・スミスのようなロッカーやアーティストを一目見ようと大勢のフリークスがイーストヴィレッジ・シアターに詰めかけた。マーサ・カニングハムが身体をよじってくるくる回る、アレン・ギンズバーグがパンクに向かって「もっと大声で!もっと意地悪く!穴に突っ込め!」と詩を朗読する、そしてジョン・ケージがコーヒーポットを奏でるのをこうやって皆に讃えられてる本人「裸のランチ」の作家ウイリアム・バロウズがいぶかしげに傍観する。
これがアヴァンギャルドのウッドストック1978年ノヴァ・コンヴェンション、ジャンルを越えてどんなアートも感覚中心のショッピングモールの主流に取り込まれた今日のニューヨークでは絶対に起こり得ないイヴェントだ。
アメリカ文化にあいたバロウズの穴を埋めるやつはいないのか?
今年3月ニューヨーク大学が47歳の作家デニス・クーパーを記念する協議会を主催した。人の目にさらせて説明、描写ができて避けられることはどんなこともとことんやるという意味で彼の作品は「ボヴァリー夫人」ほど危険で爽快だが禁じられた欲望の対象はうぶな若者ではなく幹線道路で拾われる類の麻薬でいかれてて周囲から孤立した少年、地下室に連れ込まれレイプされ腹を裂かれる少年だった。
バロウズにはないということで注目に値する簡単に薄れたり忘れられる愛着を疑って愛を徹底的に破壊してるのに投げうった愛がなかなか消えないほとんどゾンビ状態の執着。ニトロのようにどろどろしたあこがれ、切望、この愛の結末がクーパーの本を人を感動させる本にさせていた。
バロウズが小説を書く前にスクラップブックを作ったようにデニス・クーパーもそれによく似たスクラップブックを作った(協議会でそれも展示された)。思春期にまでさかのぼるスクラップのイメージを構成する少年や殺害者に彼はいまだに性的に圧倒されると告白する。
パンクからニューウェイヴ、暗鬱な側のキュアやジョイ・デヴィジョンの残響が感じ取れるクーパーはヴァーレーで成長、詩を書きだした14歳で両親が離婚、激しく情緒不安定な母親と取り残される。当時ヒッチハイカーを狙った「フリーウエイ殺人鬼」というのがいてクーパーの家の裏手の山でも数人の少年がレイプされ殺された。彼は殺しの現場に登るとほとんど宗教的とも言える体験をする。この事件の切り抜きは彼のスクラップブックで飛び抜けていた。
15 歳で彼は生涯の愛人ジョージ・マイルズに出会う(どの本にも中心人物で登場するから読者にはおなじみだ)。ジョージはクーパーが惹き付けられる人物の総称で出会った当初ジョージは小学6年生でLSD で恐ろしい幻覚を見る精神状態だった。それから一番の親友になり恋人になるがクーパー30 歳で破局。
「全部を追い払おうと本の連作を始めた」「この本を読んで僕のことを思ってくれるだろうと考えた」
ところが4作目「Guide 」が出版された97 年マイルズが10 年も前に自殺してたことがわかる。彼はすべてが無駄、連作は失敗だったと打ちのめされる。
5作目の最新作「Period 」で連作ジョージ・マイルズが完結した今、クーパーの世界に見込みはあるのだろうか?明日の革命につながる今日の「裸のランチ」の見込みのほどは?
答えは彼がしようとしてるプロジェクトが示す。両親の自分への期待はずれを恨むには愛しすぎていたせいで両親を殺し、オレゴンの自分の高校で銃を乱射した少年キップ・キンケルに関するものだ。
TV でキップの自白を聞いたクーパーは子供の頃裏山で殺された少年たちに魅了されたと同様に魅せられた。「この子は全くの孤独だった」「一緒にいる必要を強く感じた」

▲参考資料:VILLAGE VOICE 3/7, 2000
★CLOSER 1989 大栄出版 FRISK 1991 ペヨトル工房 WRONG 1992 大栄出版 JERK 1993 白水社 TRY 1994(TAMA- 28 掲載、2000 UP AND DOWN )